2016年06月02日

『スクープのたまご』 大崎梢

大手出版社の週刊誌編集部に異例の転属を命じられた入社二年目の信田日向子。

週刊誌編集部の構成、仕事内容、外部のライターやカメラマンとの関係など、内情もおもしろい。特に外部ライターのベテラン村井がいい味わいを出しています。

連続殺人事件の指名手配犯の保護司を訪ねて、新潟の山奥まで出張するヒナコに、親切に手を差し伸べてくれる民間のご夫婦。

行方不明の女子高校生のバイト先を追って、駅ビルのテナントめぐりをする際に、重要なヒントをくれるショップ店員。

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2015年02月04日

『鬼はもとより』 青山文平

時代小説ですが、経済小説として抜きん出て面白い。

寛延3年(1750)、小さな藩の藩札掛・奥脇抄一郎は、藩の財政悪化から藩札の増刷を主張する家老衆から逃れるために、藩札の版木を抱えて脱藩。

藩札の神様と言われた藩札頭で、今は亡き佐島兵右衛門の教えとして、命を懸けて藩札掛を務め、必要とあらば版木を抱えて逃げろと言われていました。

藩の経済破たんを回避した抄一郎ですが、しかし逃げる以外に藩の財政を立て直す方法がわかりません。奥浅草で万年青商いをしながら、藩札で藩財政を立て直す仕法について勉強を重ねます。

やがて藩札板行指南(藩札コンサルタント)として少しずつ仕事が増えてきます。そんな時に持ち込まれたのが、一万七千石の島村藩の財政立て直しです。

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ラベル:経済小説
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2014年08月28日

『ルーズヴェルト・ゲーム』 池井戸潤

社会人野球チーム青島製作所から、カリスマ監督は
エースと4番打者を率いて、ライバル企業のミツワ電器に
引き抜かれます。

成績低迷のチームは、新しい監督を迎えるも
その手法にベテランが反目。

青島製作所自体も、景気低迷、売上減少から
大リストラの鉈を振るい始めます。
そこで首を切られる社員へリストラを通告するのが
野球部部長で総務部部長の三上。

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ラベル:お仕事小説
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2014年08月18日

『蔦屋』 谷津矢車

奇抜な出版物で知られた、江戸中期の版元・蔦屋重三郎は
特に写楽の浮世絵を世に送り出した人物として有名。

彼は吉原で、耕書堂という本屋を開き、
吉原細見という遊女の案内書をロングセラーにしました。

彼が日本橋に出店するために買い入れたのが
日本橋の版元で廃業間近の豊仙堂。
その主の小兵衛は還暦間近で引退も視野に入れていたが
重三郎にほだされ、もう一度出版業に身を投じます。

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2014年03月15日

『スコールの夜』 芦崎 笙

男女雇用機会均等法施行後、大手都市銀行に
第一期女性総合職として入行した吉沢環。
女性初の本店管理職に抜擢されるも
任命された総合企画部の関連事業室長は
会社の汚れ仕事もこなさなければならないハードな職掌です。

男社会の典型の金融業界で奮闘する女性総合職という
主人公は、東大法学部という学歴をもってしても
会社の組織にはなかなか入り込めない。

ガラスの天井を初めて突き破った環に課せられたのは
直系子会社――しかも本社からさまざまな理由で
転籍せざるを得なかった社員の受け皿会社の解体と
200人の社員解雇。

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ラベル:お仕事小説
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2014年03月06日

『下町ロケット』 池井戸潤

お金と夢の天秤のバランスはとれてるだろうか。

大田区の中小企業佃製作所社長・佃航平は
かつて宇宙科学開発機構でロケットの研究を行っていました。
ロケット打ち上げに失敗し、引責辞任し、家業につきました。

大手取引先からの取引中止、
あくどい大手ライバル企業からの訴訟、
特許の穴、頼りにならない顧問弁護士と
中小企業を取り巻く厳しい環境と事態が次々に佃を襲います。

それらを一つひとつと奮闘中、
国産ロケットの開発製造を手掛ける巨大企業から
特許技術の買収話が持ち込まれます。

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ラベル:お仕事小説
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2012年07月03日

『クローバー・レイン』 大崎 梢

大手出版社の文芸書担当の工藤彰彦は
偶然、珠玉の小説に出合います。
作者は、かつていい作品を書いていたが、今は落ち目で
なかなか新刊を出すのが難しくなっている作家・家永嘉人。

作品の評価よりも売上部数の方が優先される出版社の事情、
それに翻弄される作家とお蔵入りしていく作品たち。
まずはここがお仕事小説としての読みどころ。
これだけでおもしろく読めます。

さらにその作品には、仲違いしている娘の詩が無断で使われており、
家永に代わり、彰彦が娘の冬実に会いに行き、許可を求めます。

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2012年05月20日

『寿フォーエバー』 山本幸久

お金がなくて建て替えもできない旧態然の
結婚式場に勤める靖子28歳。
彼氏いない歴9年なのに、人の幸せを祝福し
演出するウエディングプランナーです。

仕事では招待客300人の大口顧客を抱えるも
その我が儘とアツアツぶりにイライラし、
ほかの顧客は儲けにならなかったり
一筋縄ではいかなかったり。

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2011年12月07日

『マスカレード・ホテル』 東野圭吾

3件の連続殺人事件は、場所も被害者も凶器もバラバラながら
残された数字から、次の舞台は東京の一流ホテルが浮かび上がります。

そのホテルの従業員として潜入した警視庁の刑事新田と
彼の教育係をまかされる、フロントクラーク係の山岸尚美。
二人のクロスカッティングで、ホテルの内部、仕事を含めて
殺人事件を追っていきます。

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ラベル:お仕事小説
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2011年11月09日

『コーヒーもう一杯』 平 安寿子

主人公は32歳の、店舗内装デザイン会社の営業・未紀。
3年近く付きあった彼からふられ、夢みた結婚はつぶれます。
さらに仕事で大失敗。会社にも居づらい雰囲気に。

未紀の仕事は、お店を持ちたいクライアントと
内装業者やデザイナーとの取り持ち。
つまり、こだわりと言う名の我が儘対
頑固な職人のバトルをどうにかこうにか収める日々。

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2011年04月19日

『ワーカーズ・ダイジェスト』 津村記久子

表題作と「オノウエさんの不在」を収録。
どちらも、仕事や人生のしんどさを許容することを
覚える若者を描いた秀作。

「ワーカーズ・ダイジェスト」は32歳の男女――
苗字も誕生日も身長も同じ――を描きます。
仕事を通じて少しだけ接点のある二人ですが
物語はそれぞれの「しんどさ」をクロスカッティングさせます。

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2011年03月18日

『そういうものだろ、仕事っていうのは』 重松清・野中柊・石田衣良・大崎善生・盛田隆二・津村記久子

「働く」をキーワードにしたお仕事小説。
執筆者のラインナップからもわかるでしょうか。
お仕事小説にありがちな働き始めた若者が
仕事の厳しさを知り、しかし成長していくパターンの
お仕事小説ではなく、30〜40代の、
働くことをある程度理解している世代、
または働き盛りを迎えた世代の「お仕事小説」。

かといって、右肩上がりの業績は望めず
厳しい現実に直面しています。
そんななかでしみじみ「そういうものだろ、仕事っていうのは」と
つぶやくような、しかし希望を感じる物語です。

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ラベル:お仕事小説
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2010年12月20日

『虹色の皿』 拓未 司

デビュー作と同じシェフの世界を描いているので
てっきりミステリーと思ったら、王道のお仕事小説でした。

主人公は、一流の料理人になる夢を抱いて
大阪の一流の調理専門学校に入学する小西比呂。
彼が少々、いい加減。

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2010年08月09日

『路地裏ビルヂング』 三羽省吾

築50年はたっていようかという古い雑居ビルには
弱小広告代理店、怪しげな健康グッズと健康食品販売会社、
不動産会社の分室、学習塾に、無認可保育園と
まさに雑多。
そして1階の飲食店は、数カ月で次々と店を変えますが
従業員と不味さだけは変わりません。

普段は顔を合わせるくらいで
エレベーターや駐車場のことでもめることもある
店子たちは、ニートあがりや、がむしゃら体育会系、
おばさんに派遣社員、司法書士を挫折しつつある塾講師といった
ユニークで、しかし、どこかトホホな人たち。

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2009年12月05日

『孤闘』 上田秀人

本書は時代小説ですが、このような出世、裏切り、
孤独を読んでおくのも悪くないと思います。

戦国末期、大友氏の一族でありながら
豊臣秀吉が天下統一を果たした時、
「東の本多忠勝(平八郎)、西の立花宗茂(統虎)」と言わしめ、
未曾有の出世をし、
さらに徳川家康の天下となり、一度は改易させられたものの、
後に大名として復帰した唯一人の戦国武将が立花宗茂。

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2009年10月25日

『床屋さんへ ちょっと』 山本幸久

そろそろお墓の用意をしようかという年齢の宍倉勲。
彼の仕事と家族の様子を、時間を遡って語る連作短編集です。
いくつもの小さな会社の側面が重なり合って、
どれも印象に残ります。

看板商品の「ナメタリーナ」を製造するお菓子メーカーの
二代目社長だった宍倉は、石油ショックのために原材料費が高騰し、
会社をつぶしてしまいます。

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2009年09月12日

『堂島出世物語』 富樫倫太郎

堂島シリーズ3作目ですが、
このシリーズは神の視点で書かれていましたっけ?
全然記憶にないのですが、
主人公以外の人の心理まで記述が及び、
それも同情や、親の切ない心情なので
感情が話を引きずり、鬱陶しい。

それ以外は、いつものように少年が
才覚と運で立身出世していって、頼もしい。

前回までは吉左衛門が米相場で成功をつかみましたが、
今回は、吉左衛門がまだ山代屋の丁稚の頃、
丁稚頭をしていた百助の息子が主人公。

意地悪な百助は山代屋から下働きのお新と
駆け落ちするのですが、その後もパッとせず、
息子の万吉にも愛想を尽かされるくらいの怠け者。

娘が生まれた日に、百助は堀で溺れて死んでしまいますが、
8歳の万吉に一家の家計がのしかかります。

彼は青物の笊振(江戸なら棒手振)で
一人前以上の稼ぎをあげ、
午後からは米相場に顔を出し、独学しています。
そんな彼に目をつける人も出てきます。

やがて縁あって、川越屋の籐兵衛によって
川越屋に丁稚奉公に上がりますが、万吉は15になっています。

吉左が16歳で丁稚になりましたので、同じ展開かと思えば、
吉左が優等生なら、万吉はきかん気の強い小僧。
売られた喧嘩を買わずにはいられません。
丁稚奉公時代の理不尽さに
どうやって彼が戦いを挑んでいくのかが、読みどころです。

さらに最後は大相場を賭けることになり、
前作2作での、あの緊張感が蘇ります。
無茶でもなんでも、やっぱり立身出世はおもしろい。

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2009年06月05日

『ある日、アヒルバス』 山本幸久

東京を中心に巡る観光バスのバスガイド高松秀子。
入社5年目、23歳。
ワガママなお客や周りの人々にふりまわされる毎日。

山本幸久のお仕事小説にしては、
途中までダラダラ感がありノリ切っていないのですが
新人バスガイドの研修を、落ちこぼれの秀子が
サポートするようになってからがおもしろい。

ベテランのバスガイド「鋼鉄母さん」こと戸田夏美が
鞭の役割をし、サポート係りが飴。

ところが、新入社員の中に秀子を入社前から慕う
帰国子女の山中空が、勝手に「デコさん」と
あだ名で呼ぶようになり、
それから弛緩した空気が流れてしまいます。

秀子も厳しくはできず、新人の顔色を見て、
ご機嫌をとるような口調になってしまいます。
初めての後輩の指導は戸惑うことばかり。
こういうことってありますよね。

そんな彼女たちも4か月で一人前にしなければなりません。
しかも、ハデな化粧とピンヒールで戸田に睨まれている
同期の亜紀が突然、やる気を出して、
「会社をもっと改革しよう」と言い出し……。

弱小観光バス会社らしく、
女子寮も古い旅館をそのまま使い回し。
しかし、そこに味わいがあります。

『凸凹デイズ』の凹組がちょっと登場。
ユーモアタッチで描く、等身大の女子奮闘のお仕事小説。


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2009年05月03日

『トイレのポツポツ』 原宏一

池袋にある中小企業の鴨之木製麺工業。
社長が一代で築き上げた中小企業ですが
埼玉にある工場は最先端の無菌工場。
それができるのも、小さい会社内で
突っ走る社員がグイグイと推し進めてしまうから。

そんなゴリ押しが聞いてしまったり
派遣社員は社内行事や懇親会への参加ができなかったりと
首をかしげたくなるような、しかしどこの会社にもあるような
ヘンなことがまかり通っています。

そんな会社も創業者一族と一部の幹部との間に軋轢が生まれ
そのため、成分不当表示という不正まで行うようになります。

堅実な中小企業が倒れる様を、派遣社員の小さな怒りから出発し
営業部員、経理部員、配送センター長、食品開発部員などを通して
連作短編でユーモアを交えて描いていきます。

会社のなかでは弱者は常に弱く、対処法を間違うと
路頭に迷うようになります。
そしてこの小説も最後まで弱者を弱者として描いていきます。
決して明るい未来ばかりが見えているわけではありません。

しかし、なにかを信じたいと思わせるお仕事小説です。


トイレのポツポツ
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2009年04月30日

『ラヴィン・ザ・キューブ』 森深紅(もり みくれ)

SFの新人賞受賞作なのですが
女性のお仕事小説としてもよくできています。

2050年、世界最大のロボットメーカー、
ファーイーストワークスに勤める水沢依奈は
「イグニッションキーパー」とあだ名されるくらい
納期厳守で、すべてのトラブルを自ら解決してしまうスーパーウーマン。

しかし彼女は認知症の父親の介護のために
工業デザイナーの夢と、スイスの大学卒業資格を諦めて
通訳の派遣社員からキャリアを始めたという叩き上げ。

能力の高い依奈ですが、彼女の仕事のやり方には
周りの人々との軋轢があります。
また失敗もきっちりと描いていきます。

特別の異動で、特装機体開発室の秘書にさせられ
そこで大失敗を犯してしまいながらも、それに屈せず、
また次の「プロジェクト キューブ」でも
女性ならではの感情を発してしまいます。
このあたりは、女性にとってもう一つの壁。

依奈の役割を次々に変え
プロジェクトの全容が次第に明らかになりながら
彼女の活躍から目が離せない。
しかもアートとエンジニアリングが有機的に結合して――。
魅惑的で美しい世界を作り上げています。

第9回(2008年)小松左京賞受賞作。


ラヴィン・ザ・キューブ
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