2015年02月04日

『鬼はもとより』 青山文平

時代小説ですが、経済小説として抜きん出て面白い。

寛延3年(1750)、小さな藩の藩札掛・奥脇抄一郎は、藩の財政悪化から藩札の増刷を主張する家老衆から逃れるために、藩札の版木を抱えて脱藩。

藩札の神様と言われた藩札頭で、今は亡き佐島兵右衛門の教えとして、命を懸けて藩札掛を務め、必要とあらば版木を抱えて逃げろと言われていました。

藩の経済破たんを回避した抄一郎ですが、しかし逃げる以外に藩の財政を立て直す方法がわかりません。奥浅草で万年青商いをしながら、藩札で藩財政を立て直す仕法について勉強を重ねます。

やがて藩札板行指南(藩札コンサルタント)として少しずつ仕事が増えてきます。そんな時に持ち込まれたのが、一万七千石の島村藩の財政立て直しです。

島村藩はとんでもなく貧しく、藩士の志気は落ち、剣の稽古よりも魚釣りが励行されるような事態を、10年以上、手をこまねいています。執政兼藩札掛の梶原清明の英断により、根底から藩を立て直すために藩札を利用することになります。

その時に白羽の矢が抄一郎に立ちました。

どうしようもない事態の藩を目覚めさせ、藩の特産物を商いで儲けさせ、国元にお金が回るように仕組みます。そこに藩札を絡めて、より財政を強くしていきます。

抄一郎が国に残してきた屈託と、梶原清明と後継ぎの甥・講平の個人的な物語もまた読ませます。

そもそも「武」と「金」は相容れないものですが、そこに「命」を懸ければ、両立します。自害することの重さを伝えてくれる良質な時代小説です。






ラベル:経済小説
posted by かつき at 16:47| Comment(0) | TrackBack(0) | お仕事小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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