2014年01月24日

『田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」』 渡邉格

岡山で自家製天然酵母パン屋タルマーリーを営む 
渡邉格さんの半生と、新しい経営体の本。

うちの近くにも姉妹でやっている天然酵母のパン屋があり
たまに利用しています。週に4日しか開いていません。
パンが売り切れたら、お昼でもおしまい。

もっと売り上げを増やそうとか、
もっとお店を大きくしようとか考えていない。
自分たちができる範囲で、地に足をつけて
観光客だけではなく(浅草にあります)
地元のお客さんがくるようなパン屋です。
(古い家屋を改修しているのも今どき)


初めの頃はすごく違和感があったのですが
これが今の人の価値観なのだと思いました。

そんな「今の価値観」を言葉で、しかもマルクス資本主義から
解説してくれているのが、本書。

マルクスの資本主義「腐らない経済」の反対
「腐る経済」を実践しています。
これは菌の発酵が、「腐敗」と紙一重だということに例えてもいます。

渡邉さんは福島原発事故をきっかけに
軌道に乗っていた千葉のお店をたたんで、岡山の勝山に移住。
そこは「菌」が活きている町だったから。
造り酒屋やワイナリーがあり、手染色や竹細工の職人さんがいて、
地場の小麦粉や野菜が手に入ります。

地場の安全な素材を使い、自家製天然酵母を使った
丁寧なパン作りをめざし、まっとうな価格で売ります。
週に3日休み、年に一度は1か月の長期休暇。
それで体と心を健全に保ちます。

発酵、循環、利潤を生まない、パンと人を育てることが
中心となりますが、どの章もおもしろい。

特にタルマーリーの看板パン和食パンに使う
天然麹菌の話は興味深い。
自然の麹菌は有機栽培の米ではダメで
自然栽培の米だと最高の組み合わせになるのには目からウロコ。
自然栽培について他の本を読んでいたところなので
さらにおもしろく読みました。

さらに「場」の重要性は、10年近くやっている気功とも
リンクして、腑に落ちました。

またこれらの自家製天然酵母パン(無添加)が
高い理由がわかりました。
それでも原材料費と人件費がほとんどという。
今までもそういうパンばかり食べているけれど
これからも食べ続けようと確信しました。

タルマーリーの和食パン、お取り寄せしてみたい。
(オンラインショッピングがお休み中)

bard_happybird.gif 本書でチェックしたところ
マルクスの考えでは、「価格」の基準はあくまで「交換価値」にあって、「需要と供給」は、「価格」を変動させる2次的な要素だ、というのだ。

「天然菌」と「自然栽培」の作物が、手を取りあって喜んでいるように見えた。どちらも、「内なる生命の力」を花開かせることに長けているから相性抜群。「発酵」の過程で、「菌」と作物の生命力が、お互いがお互いを刺激しあい、足し算ではなく掛け算になって、大きく強くなっている。

自然の力に任せるのなら、空気中の菌が降りてくる”場”をつくって待つことが何よりも大切なんだ――。

不思議なのは、つくる側の気持ちが「菌」にも乗り移っているとしか思えないこと。



bard_happybird.gif 目次
第1部 腐らない経済
 第一章 何かがおかしい(サラリーマン時代の話・祖父から受け継いだもの)
 第二章 マルクスとの出会い(父から受け継いだもの)
 第三章 マルクスと労働力の話(修業時代の話1)
 第四章 菌と技術革新の話(修業時代の話2)
 第五章 腐らないパンと腐らないおカネ(修業時代の話3)
第2部 腐る経済
 第一章 ようこそ、「田舎のパン屋」へ
 第二章 菌の声を聴け(発酵)
 第三章 「田舎」への道のり(循環)
 第四章 搾取なき経営のかたち(「利潤」を生まない)
 第五章 次なる挑戦(パンと人を育てる)






タグ:経営
posted by かつき at 16:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 起業・経営・商売繁盛 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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