2011年04月19日

『ワーカーズ・ダイジェスト』 津村記久子

表題作と「オノウエさんの不在」を収録。
どちらも、仕事や人生のしんどさを許容することを
覚える若者を描いた秀作。

「ワーカーズ・ダイジェスト」は32歳の男女――
苗字も誕生日も身長も同じ――を描きます。
仕事を通じて少しだけ接点のある二人ですが
物語はそれぞれの「しんどさ」をクロスカッティングさせます。

奈加子は10年付き合った孝と別れたばかりで
肌のシミや厄年が気になります。
デザイン会社で編集をしながら
副業でフリーライターをやっています。

同じ年の会社の友だちが結婚を焦るものの
奈加子はその気にもなれず
体の疲れはなかなかとれなくなっています。

重信は、大阪支社で欠員が出たため
東京から転勤してきます。
実家に帰るものの、居場所はなくなり
中途半端な感じで暮らしています。

仕事では、建設中のマンションをめぐって
近隣の住民からのクレーム電話に悩まされます。
恋愛どころか性欲さえも湧かないこの頃です。

すごく大きな事件はないものの
小さな「しんどさ」が重なる日常に
ちょっとだけハイになれるような出来事があり
それで生きていける。
すっごくよくわかります。

それが奈加子、重信という男女に
性差なく平等に訪れるおもしろさ。
「性」が希薄でありながら、でも周囲の勝手な思い入れに
翻弄させられ、やっぱり性を意識させるのも
普段は忘れている自分の性を
ふとした時に意識するのと似ています。

この二人がなかなか再会しないのも
もどかしく、でも楽しみに読めます。

「オノウエさんの不在」は、若手のサカマキの視点で
会社内のパワーバランスや出世を描きます。
新入社員時代にお世話になった
頼れる先輩「オノウエさん」が会社内で干されている
という噂が、サカマキには信じられません。

調子のいい同期のシカタに振り回されながらも
サカマキは、オノウエさん情報を求め
総務の地味な先輩(でも年齢は1コ下)のしぎ野さんと
たびたび会うようになります。

オノウエさんは最後まで登場しないのですが
サカマキの回想の中の彼は、いい感じです。
学閥も派閥も所属せず、飄々と面倒なことをやりすごし
仕事はきっちり仕上げていきます。

みんな、ちょっとずつ成長していく姿がすがすがしい。

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posted by かつき at 17:31| Comment(0) | TrackBack(1) | お仕事小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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