2010年08月09日

『路地裏ビルヂング』 三羽省吾

築50年はたっていようかという古い雑居ビルには
弱小広告代理店、怪しげな健康グッズと健康食品販売会社、
不動産会社の分室、学習塾に、無認可保育園と
まさに雑多。
そして1階の飲食店は、数カ月で次々と店を変えますが
従業員と不味さだけは変わりません。

普段は顔を合わせるくらいで
エレベーターや駐車場のことでもめることもある
店子たちは、ニートあがりや、がむしゃら体育会系、
おばさんに派遣社員、司法書士を挫折しつつある塾講師といった
ユニークで、しかし、どこかトホホな人たち。

彼らが織りなす人間模様を、意外にも真面目に
連作短編で描いています。

初めの短編「道祖神」では、ノルマ営業のカラクリや
顧客名簿詐欺を鮮やかに描きます。
この時、初めて社員になるヤンキーっぽい加藤が
あとの短編では先輩社員として後輩を率いるようになったり。

一人息子を育てることで精一杯だったおばさんが
56歳にして仕事に夢を持つようになったり。(「紙飛行機」

あるいは、大手広告代理店の下請けに飽き足らない
中堅どころのサラリーマンが、個人で大きなコンペに参加したり。(「風穴」

それぞれが今の自分を打ち破る何かに挑戦したり、
何かに気づいたりする仕事小説に仕上がっています。
こういう群像劇は三羽省吾の真骨頂ですね。

このワサワサした人々に一服の清涼剤となっているのが
屋上の植木を世話している、爽やかな美人の女性。

やがて物語は、このビルヂング設立、
いえ、その前身のお話、明治初期にまで遡っていきます。
最後はしみじみと夕暮れを眺めたくなります。

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三羽省吾
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posted by かつき at 15:40| Comment(0) | TrackBack(1) | お仕事小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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