2009年10月25日

『床屋さんへ ちょっと』 山本幸久

そろそろお墓の用意をしようかという年齢の宍倉勲。
彼の仕事と家族の様子を、時間を遡って語る連作短編集です。
いくつもの小さな会社の側面が重なり合って、
どれも印象に残ります。

看板商品の「ナメタリーナ」を製造するお菓子メーカーの
二代目社長だった宍倉は、石油ショックのために原材料費が高騰し、
会社をつぶしてしまいます。

目黒の家を売り、妻と一人娘の香を妻の実家に預け、
残務整理を終えた彼は、団地を借りて、
別の会社に勤め始めます。

そこも定年退職し、今は悠々自適。
と思ったら香が息子の勇とともに出戻ってきます。

時間軸を戻しながら、だんだん明らかになっていく彼の人生は
屈辱もあり、後悔もあり、しかし彼らしく真っ正直でした。

経営者としての才能はなかったけれど、
それでもいいのではないだろうか。
どんな時でも彼は彼なりに一生懸命だったと感じます。

お嬢様な面と、普通の女の子の面と、
しかしやっぱり創業者の孫の面をもつ香が等身大で、
彼女の甘さもうっ屈もよくわかります。

女性にある見えない天井に向かって、
女子高校生のうちから考え始める彼女の物語もまた
お仕事小説として読んでみたい。

8つの短編のなかに、必ず床屋が現れて、
生活の息抜きや通過地点、大切な場面として描かれます。

特に、つぶしてしまったお菓子工場の前に合った浜名理容室。
ここの初代から三代目までが登場し、
このお店も紆余曲折がありました。

仕事人生がいくつも絡み合う家族経営の物語。


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山本幸久
☆☆☆☆
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posted by かつき at 09:16| お仕事小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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