女性のお仕事小説としてもよくできています。
2050年、世界最大のロボットメーカー、
ファーイーストワークスに勤める水沢依奈は
「イグニッションキーパー」とあだ名されるくらい
納期厳守で、すべてのトラブルを自ら解決してしまうスーパーウーマン。
しかし彼女は認知症の父親の介護のために
工業デザイナーの夢と、スイスの大学卒業資格を諦めて
通訳の派遣社員からキャリアを始めたという叩き上げ。
能力の高い依奈ですが、彼女の仕事のやり方には
周りの人々との軋轢があります。
また失敗もきっちりと描いていきます。
特別の異動で、特装機体開発室の秘書にさせられ
そこで大失敗を犯してしまいながらも、それに屈せず、
また次の「プロジェクト キューブ」でも
女性ならではの感情を発してしまいます。
このあたりは、女性にとってもう一つの壁。
依奈の役割を次々に変え
プロジェクトの全容が次第に明らかになりながら
彼女の活躍から目が離せない。
しかもアートとエンジニアリングが有機的に結合して――。
魅惑的で美しい世界を作り上げています。
第9回(2008年)小松左京賞受賞作。
森深紅







